2004年09月04日

ロシア・チェチェン武装勢力/テロ

■ロシアで凄惨な事件が起きた。社説をぼんやりと読む。


■読売新聞/社説「学校占拠テロ―毅然と立ち向かうしかなかった」
 テロリストの求めに、わずかでも譲歩の構えを見せれば、新たなテロを誘発するだけだ、との判断がプーチン・ロシア大統領には働いたのだろう。

 プーチン大統領は、テロリストの常套手段に屈することなく、取引にも一切応じない毅然とした態度でテロに立ち向かった。当然あるべき姿勢である。

 チェチェン武装勢力と見られる犯人グループは、新学期の始業式直後の学校を襲撃し、多数の児童・生徒らを人質に取った。その上で、チェチェン共和国からのロシア軍の撤退や、治安当局に拘束された仲間の釈放などを要求していた。

 プーチン大統領は、「人質の生命と健康を守るのが我々の主任務」と語り、慎重な対応を示唆していた。

 人質の多くが子供たちであることに加え、とかく政情不安がささやかれる北カフカス地域での出来事ということもあって、できれば強硬策は回避したかったのだろう。

 人質となった女性や子供の一部が解放されはしたが、武装グループと治安部隊のにらみ合いは続いていた。

 事件発生からまる二日が過ぎ、武装グループが、外部からの水や食料の差し入れを拒む中、子供を中心とする人質の衰弱も心配されていた。
 読売は明確に政府の行動を評価している。他紙は全貌がわかってないせいか、そのあたりは明確に評価していない。逆にいえば、現時点で合格点をだせるのは、「テロに屈しなかった」という一点に尽きるのか。だが、これが最良の策だったのか?

プーチン大統領が、従来のチェチェン政策をこのまま継続すれば、同様の事件の続発が想定される。プーチン政権にとって、テロとの戦いは安易な妥協が許されない、最も困難な課題となっている。
 …と社説を締めているが、 じゃ、どーすんの? って質問には答えてくれない。これに対して、産経は次のように主張する。

■産経新聞/社説「露学校占拠事件『歴史』清算踏まえ対応を」
 大流血を招いたテロ行為は徹底糾弾されるべきだ。プーチン政権も「テロリストとは交渉しない」と弾圧路線を貫いてきた。一方でロシア国内ではにわかに批判も高まっており、武闘戦術を放棄した穏健派のマスハドフ元チェチェン大統領さえ「クレムリンの虐殺的戦争と犯罪的政策こそがカフカス全域の不安定化の元凶だ」と語った。

 プーチン政権にテロの連鎖を断ち切りうる道があるとすれば、まずはチェチェン民族抹殺を図った帝政ロシアから民族強制移住を断行したスターリン時代を経て現在に至るまでの「弾圧の歴史」の清算に着手することだ。

 これを踏まえて武闘・独立派に大幅な自治権を与える政策への転換を図る選択肢以外にはない。十八世紀にロシアに征服・併合されて以来のチェチェンの「血の復讐心」はそれほどに根深いが、彼らも残虐なテロの継続は国際的反発を増すだけと心すべきだ。
 もっともな主張だ。やや意外なことに、「テロリスト」に対して厳しい批判をしてきた産経が、今回に関しては「大流血を招いたテロ行為は徹底糾弾されるべきだ」ってな感じで、朝日や毎日などの前置き程度の軽い批判にとどめている。


■「武闘・独立派に大幅な自治権を与える政策への転換を図る選択肢以外ない」というのも正論だ。だが、これは「テロに屈するな!」式の主張を繰り返してきた産経の口から出てくるのはおかしい。なぜなら、テロによって、彼/彼女らの主張に耳を貸し、行動を修正せよってんだから。

■そのあたりの弁明は?
 チェチェン独自の歴史的観点に立てば、プーチン政権の譲歩は必ずしもテロに屈することにはならず、「法と正義」に則ったことになる。テロ組織アルカーイダが米・文明社会に挑戦するのとは事の性格が異なるからだ。
 なんとも短く、説得力がない弁明。で、「歴史的観点」というなんとも便利なお言葉のご登場。アメリカがやってきた「歴史的観点」ってのは考慮されないのか? そして、「法と正義」に、やや苦笑。


■朝日新聞/社説「学校占拠事件――力と憎悪が招いた悲劇」
 いずれの行為も非道というほかない。これでは、彼らが頼みとする住民の支持も国際的な理解も得られまい。自らの主張に耳を傾けてもらいたいのなら、こうしたテロ行為からは一刻も早く手を引き、二度と繰り返さないことだ。

 ロシアの責任も決して軽くない。過去の人質事件では、何度も強硬策が悲劇を招いたのに、教訓は生かされなかった。

 テロがなぜ続発するのかについて、冷静に考える必要もあろう。事件そのものの責任は武装勢力側にあるが、やっかいな問題は力で決着をつけるプーチン政権の体質に無縁といえるだろうか。

 北オセチアは、隣接するチェチェンと同じ北カフカス地方にある。首都のウラジカフカスが「カフカスを征服せよ」を意味するように、この一帯はロシア帝国以来の南進政策における要衝である。

 プーチン大統領は、チェチェンで軍や治安部隊を大量動員して独立派勢力を掃討する強硬策を取り続けてきた。それが憎悪と報復を生む悪循環となり、現在の事態につながったのは明らかだ。

 一方、北カフカスに隣り合うグルジアでは、同国からの独立を目指す勢力をロシアがさまざまな形で支援してきた。これがグルジア側の怒りを買い、逆に同国内にチェチェン独立派を支援する動きを生んでいる。自らが地域の不安定さを強めていることに思いをいたすべきだ。

 気になるのは、一連のテロについて、中東のイスラム過激派「イスランブリ旅団」が犯行声明を出していることだ。

 国際テロ組織アルカイダとの関係が指摘される一派である。外国の勢力が介入を始めたとなると、事態はさらにこじれることが避けられない。プーチン氏は、独立派との対話にも努め、事態の打開を急がなければならない。

 米欧をはじめとする国際社会は、「テロとの戦い」にロシアをつなぎ留めようと、チェチェン問題での批判を控えてきた。だが、これ以上の混乱は、世界の安全にも大きな脅威となりかねない。
 「自らの主張に耳を傾けてもらいたいのなら、こうしたテロ行為からは一刻も早く手を引き、二度と繰り返さないことだ」と言っておきながら、直後に「テロがなぜ続発するのかについて、冷静に考える必要もあろう」である。「おもいっきし、テロで耳を傾けてんじゃん!」ってツッコミを入れたくもなりますが。

■…というわけで、「テロ」は世界の目を集めるための有効な手段になっている。9.11以降、プーチンは「テロとの戦い」という御旗を得て、さぞかし弾圧が楽になっただろう。国際社会もそれを黙認してきたわけだ。さて、世界はどう動く?そして、ブッシュは?


■面白みに欠けるが、参考までに日経も…

■日経新聞/社説「許し難いロシアの学校標的テロ」
 今回の事件にプーチン政権は大きな衝撃を受けている。プーチン大統領は2002年10月のモスクワの劇場を舞台にした人質事件の際、強行突破を指示し、人質約130人が死亡した。ロシアでは、テロに屈しない姿勢を示したとの評価もあり、政治的な打撃は小さかった。

 しかし、今回は市民の間からは、プーチン政権は何をやっているのかという厳しい批判があがるのは避けられないだろう。情報機関、保安機関が機能していなかったため一連のテロを許してしまった。

 プーチン大統領は今夏、老齢者や身障者に対する様々な福祉サービスをすべて現金を支給する形に変え、国民の多数から反発を買った。支持率は下降傾向にある。テロへの対応のまずさがこれに加わり、プーチン政権は正念場を迎えている。

 続発するテロの背景には、プーチン政権による強引とも呼べるチェチェン統治があるとの見方もある。

 チェチェン共和国ではソ連崩壊直後から独立闘争が活発化、これを阻止しようという連邦側と1994年から戦闘が続いている。この紛争に当面終わりはこないだろう。
 「テロの背景には、プーチン政権による強引とも呼べるチェチェン統治があるとの見方もある」とかねぇ…なんかNHKの討論番組みたい(「小泉首相は丸投げしている…との批判もありますが?」ってな感じで)。社説っていうなら、もうちょっと主張して欲しい。


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